令和8年度・愛宕神社千日詣りの思い出
こんにちは。喫茶ふでまめの亭主です。
京都・出町柳で、毎週日曜日だけ営業しております。
京都にお住まいの方は、飲食店の壁にこのようなお札が貼られているのを、一度は目にされたことがあるのではないでしょうか。

これは、愛宕神社で授与される「火の用心」の札です。
火の扱いに注意して、火事が起こらぬよう・・・という願をかけるものです。
愛宕神社の公式サイトに、お札に関する詳細が説明されています。
年に一度、御利益1000倍のボーナスタイムがある
そんな愛宕神社、実は年に一度だけ「今日来てくれたら、1000日分の御利益を授けます」という非常におトクなタイミングがあります。
それが、7/31夜~8/1早朝にかけての時間帯。
この日に夜通しお参りすることは「千日詣り(せんにちまいり)」と呼ばれており、そのインパクトも相まってか、遠方からも多くの方が参拝するのだとか。
私が千日詣りのことを知ったのは、マンガがきっかけでした。
実家(兵庫県)で母が読んでいた『舞妓さんちのまかないさん』のなかに、愛宕神社の千日詣りについてのお話があり、「せっかく京都にいて喫茶店をやってるんやし、一度くらいは行ってみよう」と思ったのです。
しかも、ちょうど今年(2026年)は、7/31(金)~8/1(土)という絶好の日取り。
金曜日に仕事を終えてから、21時半ごろに家を出て、人生初の千日詣に行ってきました。
女将さんの手を煩わせながら準備する
私の弱点として「事前に何かを準備するのが苦手」というものがあります。
今回の千日詣りに関しても、「あれ持っていかんでいいの?」「これ持って行っといたら?」と女将さんに世話を焼いてもらいながら、のろのろと準備を済ませました。
といっても、持って行ったのは
- 着替えのTシャツ
- 上着
- 水(2リットル)
- 懐中電灯
くらい。
たったこの程度の持ち物すら自分で思いつかないという。
火事の前に、段取り能力の不足を心配した方がよいかもしれません。
21時半ごろに家を出て、近所のライフ(スーパー)で塩飴とあんぱん(小さいやつが5個くらい入ってるやつ)を購入。
これは女将さんの意見ではなく、私が自分の頭を絞って考え、必要だと判断して購入しました。
嵐電と京都バスを乗り継いで、清滝へ
普段あまり乗らない嵐電(京福電鉄)に乗って、嵐山へ。
嵐山駅からは、千日詣特別ダイヤで運行してくれている京都バスに乗って、愛宕山ふもとの清滝に到着。
時刻は23時過ぎ。すでに多数の方がいました。

鳥居の前で一礼し、登山スタート。
頭上には、ワイヤーに吊られた裸電球がぽつりぽつり。

「おくだりやす」のイントネーション問題
千日詣の際には、登り・下りですれ違う際に独特のあいさつを交わします。
それが「おのぼりやす」と「おくだりやす」。
お参りを済ませて下山する人は、これから登っていく人に向かって「おのぼりやす」、逆に、これからお参りをする人は、下山していく人に向かって「おくだりやす」と声をかけ、互いをねぎらうのです。
・・・という前情報は知っていたので、実際に「おのぼりやす」と声をかけらてもらった際にも慌てずに「おくだりやす」と返答することができました。

多くの方が立ち止まって写真を撮っていました。
しかしここでひとつ気になることが。
それは「”おくだりやす”のイントネーションって、何が正解なんだ?」ということです。
周りの人たちの声に注意を向けていると、大きく6つくらいの流派に分かれていることが判明しました。
▼パターン1
▼パターン2
▼パターン3
▼パターン4
▼パターン5
▼パターン6
最も多く耳にしたのは、パターン1でした。
はじめこちらのイントネーションに倣っていたのですが、なんとなく「お疲れさまでーす」みたいな感じで、ちょっと暗いなぁという気がしました。
パターン2と3も、なんかしっくりこない。
パターン4は、ヌーブラヤッホー♪みたいで違う。
パターン5は、さすがに京都っぽすぎて、たぶん違う。
以上の消去法により、個人的にはパターン6が最もしっくりきました。
もし正解をご存知の方がいらっしゃったら教えてください(そもそも正解とかはないのでしょうか?)。
基本的に「いま下山している方たちは、私にとって千日詣の先輩なのだ」と思い、そこに敬意を表する意味で、
相手の”おのぼりやす”のイントネーションに合致した”おくだりやす”を返す
という手法を取りました。
相手が無言で自分から仕掛ける場合には、自分なりに選出したベストイントネーションであるパターン6で”おくだりやす”を言うことにしました。

ところで、先に下山されていく先輩方は、登っている私たち後輩に向けて団扇で風を送ってくれたり、足元を懐中電灯で照らしてくれたりと、さりげない優しさを示してくださり、やはり先輩は敬うべきだという思いを強くしました。
山頂で神に出会う
山頂に到着したのは、8/1(土)午前1時を少しまわったころ。
神社の入り口から見ると、献燈した個人・法人の名前、奥から見ると「千日詣」の赤文字がずらっと並んでおり、壮観でした。

お参りの後、社務所でお札を購入。
担当されていたのはおそらく学生さんのアルバイトだと思うのですが、皆さん非常にハキハキと丁寧な接客をされていました。
小さなお札を4枚購入したのですが、「同じ袋に入れてよろしいですか?」と、まるで冷たいドリンクとお弁当を買ったときのような問いかけをしてくださいました。
しかも、深夜であるということを感じさせない、非常にすがすがしく気持ちのよい笑顔。神対応だなと思いました。
笛を絶賛する紳士に出会う
境内では、多くの参拝客の方が仮眠を取ったり休憩したりされていました。
それもそのはず、このあと2時からは「朝御饌祭(あさみけさい)」という神事がおこなわれるのです。

きっちり2時に、神事が始まりました。
といっても、近くには人だかりができており、中の様子は見えません。
「見えへんな~」といって去っていく人もいるため少しずつ前に進めるのですが、見えへんかった人たちと場所を入れ替わるだけなので、最後まで見えへんままでした。
ただ、こういうものは、別に見えたからどうこうではなく、その場に居合わせることが大事なんだと思います。
見えたとしても、神事関連の知識がない私にはたぶんよくわからないでしょうし・・・
なので無理に見ようとせず、美しい欄間を眺めながら、笛の音を聴いていました。

幸い、笛の音はしっかり聞こえてきます。
ボーっと欄間に見とれていたら、近くにいた紳士が
「めっちゃ笛うまいなぁ~!」
と感想を漏らしたので、私はとってもツボってしまいました。
そういう楽しみ方もあるんだなぁ・・・と気づきをもらうとともに、なんだか独特の着眼点がしみじみ可笑しかったです。
下り道、今度は気遣いをお返しする番だが・・・
神事も無事に終了し、見えた人たちも見えへんかった人たちも、みなぞろぞろと下山し始めました。
ただ、下りは疲れもあるのと、お神酒をいただいたのもちょっと影響しているのか、やや道幅いっぱいに広がって歩く傾向にありました。
このあたりは、ちょっと課題だなと思います。
自分たちが登るときにもらった気遣いを、下山するときはお返ししなければ・・・。
そして、もし周りでうっかりしている人がいれば、立ち止まって声をかけるなどの働きかけが必要だったよなぁ~と、下山中はずっとそんなことを考えていました。

日が昇るころ、清滝の森ではヒグラシが鳴く
清滝のバス停に到着したのは、明け方4時半ごろ。
すでにバス停には長蛇の列ができていました。
200人くらいは並んでいたように思います。
バスを待っている間、頭上からは「カナカナカナカナ・・・」というヒグラシの鳴き声が聞こえてきました。
街中ではあまり聞こえない涼やかな鳴き声のなか、木々のすき間からは月がかすんで見えました。
非日常のお参りの締めくくりとして、あまりにもピッタリ。
大音量でミンミン鳴かれていたらちょっと現実に引き戻されすぎるので、ヒグラシはグッジョブだったと思います。
そうこうしているうちに、京都バスが続々と登場しました。
観覧車かと思うくらいコンスタントにやってきてくれて、私の前の200人も私の後ろの何百人も、非常にスムーズにバスに乗ることができました。
こんな特別な日、他に交通手段もないのだから、少なくとも通常の2倍の460円にしたってみんな利用すると思います。
にもかかわらず通常運賃で乗せてくれるあたり、やはり公共交通事業者は偉大だよなぁ・・・と満員のバスに揺られながら感じました。
眼下には、交通整理をする警察官の方が。
思えば今回、警察の方・消防の方・京都バスの方、他にも私が気づいていないだけで、多くの方のおかげさまでこうして千日詣ができたんだなぁ・・・と思うと、やはり感謝せずにはいられません。
そしてもちろん、愛宕神社にも感謝。

非合理的な営みが時代を超えて受け継がれる尊さ
合理的な視点で見れば「わざわざ徹夜で山に登ってお参りして、何か意味あんの?」という感じになってしまいます。
少なくとも、今日的な価値観でいうと「コスパ悪くないか?」という感じになってしまうでしょう。
しかし、だからこそ、非日常で非合理的な行動をするというのは、やはり尊いなとも思います。

このnoteを読まれて「千日詣が気になったぞ」という方は、ぜひ挑戦なさってください。
来年2027年は、7/31が土曜日で、8/1は日曜日。
遠方にお住まいの方でも、比較的トライしやすい日取りかもしれませんね。
そして下山された後、もし体力が残ってらっしゃいましたら、ぜひ当店にお立ち寄りください。
日曜日なので、当店もお昼12時から営業しています。
愛宕神社からですと、徒歩4時間ほどで当店に到着しますよ。
お参りの道中であった面白いエピソードをあなたのフィルターを通して聞かせていただけることが、今からとても楽しみです。
